プレスリリース
2015年6月  吉日
報道機関各位

神奈川県異業種連携協議会(神奈川イグレン)金子和夫理事
トリウム熔融塩発電の株式会社トリウムテックソリューション会長 
「原子力発電は条件付きで稼働すべきである」
化石燃料は有限、火力発電はCO2排出で地球環境汚染を増大
6月16日  定期総会、「脱原発で考える」特別講演で発言

「非常用電源装置の増設、スーパー・タンカーの建造」が条件
最悪の爆発事故対応策を講じた上で現行原発軽水炉発電は継続する

神奈川県異業種連携協議会(議長:金究武正)は6月16日  、神奈川中小企業センタービルで第32回定期総会を開き、平成26年度事業報告、同会計決算報告、平成27年度事業計画案、同会計予算案、同役員案などを審議し全会一致で了承しました。

続いて3.11東日本大震災以降、原発存廃問題を考える著書二冊の刊行など同問題に対して積極的な発言を展開している金子和夫理事(80歳、株式会社トリウムテックソリューション会長)が「脱原発で考える」のテーマで特別講演を行いました。

2030年頃までに、使用済み燃料が発生せず、原爆・空母など軍事転用されるウラニウムも製造しない「トリウム熔融塩発電」実験炉の研究開発を目指す

金子理事は脱原発と原発稼働の相反する考えが国論を二分している現状について言及、「原子力は人類の叡智が生んだすぐれたエネルギーであり、安価で安定したエネルギー源は原子力しかないという立場を、私はとる。原子力発電は一定の条件付きで稼働すべきである」との考えを公表しました。その上で原子力産業に携わる関係者に対して、「最悪の爆発事故対応策として、非常用電源の3倍設置、大量放水で放射能拡散を防ぐスーパー・タンカー建造の条件付きで、現行原発軽水炉発電は継続しながら、最終的には、フッ化化合物による新しい乾式処理及びトリウム溶融塩炉の開発・運営に変えることを提案する」と発言しました。

金子理事は1935年長野県生まれ。80歳。現在川崎市宮前区在住。中央大学大学院工学修士課程修了。大学卒論テーマは「最近の高速中性子による核反応」。日本エンジニアリング㈱代表取締役を経て現在は、アイコンテクノ㈱代表取締役会長、㈱トリウムテックソリューション取締役会長。2013年、イグレン理事に就任。京浜工業地帯のIT企業・異業種交流会「ハイテクリバー」元会長、神奈川中小企業家同友会元代表理事、中央大学川崎白門会会長などを歴任し、川崎,横浜など神奈川県と縁が深い。

この日、金子理事はまず、電力会社など原子力関係者の間では、原子力発電は絶対安全という「原子力村の安全神話」が根強くあり、これに懐疑的な言論・行動は実行しにくい問題が存在すると、指摘しました。その上、福島原発爆破事故以来、原発は全部危険でだめであるという風潮が支配的で、現在国民の80%近くが反原発といわれていると報告しました。

さらに金子理事は次の秘話を公開しました
「大震災直後、元電力関連研究所幹部で原発専門家から、40年前福島第一原発の設計時に東電から参考意見を求められた際、日本は地震国だから、非常用電源装置は①別々の場所に②原理が異なる3種類、現在の3倍・12台設置③常時稼働、を提案した。しかし東電は無駄なことはできないと断ってきた、という話を本人から直接聞いた」

「東電は非常用電源装置を海側の低い位置に設置、津波で冠水したことが、水素爆発の原因になった。同じ福島第一原発の中でも非常用電源が高台に設置されていたのは無事だった。揺れの大きかった東北電力・女川原発も非常用電源が山側にあったため無事だった。東電が専門家の提案に従っていれば冠水は避けられ、マグニチュード9の地震でも原発は安全に稼働していたと思われる」

「もうひとつ。1979年原発が爆破し、住民に多大な被害を与えた米スリーマイル島を大震災時、たまたま訪問していたスーパー・タンカーの専門家はすぐ帰国、政治家などに大量の放水を上空から実行し放射能の拡散を抑えるスーパー・タンカーの導入を提案したが、採用されなかったという」

金子氏は我が国が反対派に押されて「脱原発」を選んだ場合、取り返しのつかない、深刻な問題に直面するとして、四つの状況を挙げました。
① 原子力発電技術の後継者が不足し、技術の衰退現象が起こってくる
② 現在まで稼動している原発から生じ国内で滞留している1万7000トンもの使用済み燃料処理が宙に浮く
③石炭火力への依存度が高まり貿易収支悪化の経済問題とCO2発生増加による地球温暖化増進問題が生じる
④ 人口増・電力増に対応するため原発建設を急ぐ中国で、仮に爆発事故が
発生した場合、偏西風により汚染大気が日本に流れてくる可能性がある

金子氏は著書を書く段階で元東大総長の有馬朗人氏から「トリウム溶融塩炉は放射性廃棄物の発生も少なく、プルトニウムも発生しない。且つ使用済み核燃料の最終処理もしやすいという利点がある。したがってトリウム溶融塩炉の技術開発を早急に進めるべきです」というメッセージを送られ、2冊の書籍出版の大きなキッカケとなった、と話しました。

総会には約100名の会員が出席、金子理事の講演に熱心に耳を傾けていました。終了後、「軽水炉と大きく違うメリットを持つトリウム溶融塩炉についてまったく知らなかった」「各国はなぜ積極的に取り組まないのか」「横須賀に配備される米原子力航空母艦に採用できないか」などの質問が相次ぎました。

金子理事は「米オークリッジ国立研究所で熔融塩実験炉は、1960年代に臨界に達しその後4年間稼働したが、ソ連との激しい軍備拡張競争の中で、原子力空母など軍事目的に貢献しないとして、研究開発が中止になった」「日本からは故古川和男氏が同研究所に参加、帰国後、考案・製造した実験炉が4年間稼働したが、これもアメリカの事情を受けて消えていった」「産業界、マスコミも積極的に動かなくなった」と説明しました。

金子理事の上記以外の講演概要は次の通り。

大学・研究機関などの22研究炉は新基準で停止、原発技術者が消える危機

石油・石炭・ガスといった化石燃料は、いずれはこの地球からなくなり有限である。枯渇した時、どうする。もうひとつ、3.11以降、電力会社が依存度を高めている石炭火力発電は二酸化炭素(CO2)発生量が多く、地球環境汚染の元凶である。環境アセスメントの対象でない電力出力11万2500キロワット未満の小規模石炭火力の建設計画が活発化しており、CO2排出が増える懸念ある。

私はこの三年間に『「脱原発」で本当に良いのですか?』、『「原発」、もう一つの選択、「使用済み核燃料」を処理できる原子炉がある』を上梓、その中で「トリウム熔融塩発電の研究開発の重要性と喫緊性」を国民に訴えてきた。

喫緊課題、国内滞留1万7000トンの使用済み燃料をどう始末する

使用済み燃料をフッ化ガスで処理したプルトニウムなどをトリウム熔融塩液体と混合して、カプセル内に封入する。これを軽水炉の中に燃料棒の一部として挿入し、ウラン棒と同居して燃焼させる。これで核燃料の処理問題が解決できる。液体を使う点が最大の特長である(RinR方式)。長年にわたる原子炉運転の産物としてのプルトニウムの大量蓄積は各国とも負担となってきており、また副産物としての高レベル核廃棄物の処理も大きな負担である。プルトニウムを作らず高レベル核廃棄物の生成が少なく、更にそれらを燃焼させて消滅させてしまうことが出来るトリウム熔融塩発電炉への関心が徐々に高まっている。

現在のウラン固形燃料原子力発電装置は、一斉にトリウム熔融塩発電装置に切り替わるのではなく、耐用年数が来たものから順次切り替わっていく

私が会長を務める㈱トリウムテックソリューションは、世界で唯一、40年にわたりトリウム熔融塩発電の技術を追求してきた技術の蓄積を背景に、世界に先駆けてクリーンで、安全で、コストの安い電力エネルギーを供給するトリウム熔融塩発電装置の実用化を目指している。そして、現在のウラン固形燃料の原子力発電装置は、一斉にトリウム熔融塩発電装置に切り替わるのではなく、耐用年数が来たものから順次切り替わっていくことになる。

このままでは原子力発電の技術者が消えるという大きな問題が横たわっている。東電福島原発事故以来、原子力関連施設に対する各種規制強化が進み、出力の低い、大学などの研究用原子炉も厳しい新規制基準をクリアできず、利用されない状況が続いている、と指摘されている。報道によると、日本で教育実習ができず、韓国へ実習の場を求める大学も出てきたという、笑うに笑えない事例がある。原子力関係者は、このまま原発停止が続けば、再稼働が予定されている原発の維持管理や廃炉技術の確立に欠かせない人材育成への影響を懸念している。大学で原子物理学を学ぶ学生が減少している問題もある。

神奈川県異業種連携協議会(神奈川イグレン)とは

神奈川県異業種連携協議会は昭和59年(1984)4月20日  、神奈川県工業試験所(当時、現神奈川県産業技術センター)にて県内グループ23団体で「神奈川県異業種グループ連絡会議」(異グ連)として発足、平成26年6月、名称変更をして、既存の異業種グループの支援だけでなく、新たに多種多様なニーズに基づく連携体づくりを推進し、総合的に支援活動を展開することを目指すことを鮮明にした。新たな社会的課題や経営課題の解決に挑戦する中小企業者の多種・多様な交流や連携づくりを応援し、国内外の広域ネットワークと豊富な人脈を活用して新しい時代づくりに貢献する拠点「かながわ異業種交流センター」、それを運営する集団「神奈川県異業種連携協議会」である。
〒231-0015 横浜市中区尾上町5-80  神奈川中小企業センタービル7

株式会社トリウムテックソリューションとは

2011年3月22日  付で㈱トリウムテックソリューション(TTS)が設立された。TTSは、新しいクリーンで、安全で、経済的な電力を供給するトリウム熔融塩発電装置の実用化を小さな資金で短期間に、国際的な協調体制により実現することを目的にしている。トリウム熔融塩発電は社長だった故古川和男博士〔文春新書「原発革命」著者)が過去40年にわたり追求してきた理想の原子炉の研究成果を具体化するものであり、同社は古川和男氏から必要な特許を譲り受け、トリウム熔融塩発電の実用化を目指す。大震災による福島原発事故を受け、世界中で安全な原発を求める機運が高まる中でトリウム熔融塩原子炉は、従来の原子炉に比べて原理的な安全性が高い原子炉として今後クローズアップされると考えている。
本社 〒195-0071 東京都町田市金井町2056-47
http://www.ttsinc.jp/

問い合わせ先
神奈川県異業種連携協議会(神奈川イグレン)
金子和夫理事
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