2025年2月4日(火)  天を仰ぐ煙突、摩耗した外壁。静謐な大地にどんと立ちはだかる巨大建築物。
ここまでの広大な水平の土地に浮かぶ建物を初めて目にしました。
太平洋戦争前にサハリンの大地に日本が建設した夢の痕跡です。
日本の領地拡大に興味を持ち、かつての樺太の地、サハリンには一体、どんな遺構が眠っているのか知りたくなりました。2009年9月  のこと、運よく州都のユジノサハリンスク直行便に搭乗できました。
フライト時間は2時間10分程度。千歳からは1時間20分。日本から一番近いヨーロッパです。

樺太はもともとアイヌをはじめ先住民族が住む土地で、その樺太の北緯50度より南、いわゆる南樺太が日本の領土になった時代がありました。日露戦争凍結後の1905年から太平洋戦争が終わった1945年までの40年間です。樺太が日本の領土になると多くの人が新天地を求めて次々と開拓の理想に燃えて活動していました。明治の終わりには1万2千あまりだった南樺太の人口は、1945年には40万人だったと言われております。樺太では大きな産業のひとつが製紙工業でした。豊富な針葉樹林を生かし、国内のパルプ需要を100パーセントまで引き上げようとしていた程です。そして誕生したのが、本展示の工場群です。わずか40年間の間にここまで発展できたことにも驚きます。

1945年8月9日  に日ソ中立条約を一方的に無視してソ連軍が侵攻を開始し、わずか2週間あまりで樺太は占領されました。樺太の地では、本当の戦争は8月以降に起きたのです。
その後、ソ連に接収されてから今日にかけて、80年もの間、異国の廃墟として眠っておりました。工場以外にも神社、戦争史跡、橋など日本が築いた痕跡が数多く残されておりました。
これらの痕跡は国境や争いを超えて伝えるべきものを持っているように思えます。

サハリンを取り扱った私の展示は5年ぶりになります。
このような社会情勢のため、容易に渡航ができなくなっております。この5年の間に、新たに写真を増やすことが難しい代わりに、当時の資料を集めて、そちらを2009年の私の渡航写真と重ねて、痕跡が立体的に見えるようにつとめております。

戦後80年、当時の面影は薄くなっておりますが、可能な限り伝わるように努力します。どうぞお立ち寄りくださいませ。

解説員 那部亜弓


◎日時
2月13日(木)  18時半から21時
2月14日(金)  16時から21時
2月15日(土)  11時から21時
2月16日(日)  11時から21時
2月17日(月)  11時から21時
2月18日(火)  11時から18時

※17日は11時から15時頃まで、外せない用事があるため、代理が行う予定です。


◎入場料 300円
資料・ドリンク付き(物販含めて現金のみ)


◎場所
本郷 SQUARE&LAB(本郷三丁目)
東京都文京区本郷3-33-3 本郷ビル4F
本郷三丁目駅から徒歩2分

飲食店「麺や 穂ころび」さんの上です。


◎注意事項

・時間は日にちによって異なりますので、ご確認ください。
・時間変更がある可能性があるので、SNSや当ブログをご確認ください。
・戦前の古いビルの中になります。階段が急なのでお気をつけください。
・エレベーターはございません。階段はお静かにお願いします。
・あまり広くないうえに、完全ワンオペのため、混雑時はお待ちいただく可能性があります。
・ドリンクは常温の飲み物で、セルフサービスです。
・トイレはビル2階に和式がひとつだけあります。
・買い物、お昼、トイレに出かけることがあるかと思います。ギャラリー入り口の扉に札でお知らせします。
・入場時にお渡しした資料をお持ちいただくと、会期中は何度でも入場可能です。
・会場はスリッパを履いていただきます。気にされる方は、持参のスリッパをお待ちください。
・展示品は百年を超える古い資料がございます。



◎解説員紹介
那部亜弓(なべあゆみ)
1983年千葉県生まれ。千葉県在住。フォトグラファー。千葉工業大学在学中、親の死をきっかけに廃墟探索に目覚め、就職と同時に全国を旅する。2008年、平壌を訪れたことをきっかけに、日本の領土拡大に興味を抱く。2009年、5泊6日でサハリンを旅する。現在、サハリンに眠る産業遺産の講演会も実施している。
ラブホテルやサハリンなど、あまり知られていない日本の凄さを伝える写真や講演活動を志している。
*著書『知られざる日本遺産 日本統治時代のサハリン廃墟巡礼』(八画出版、2015年)、『HOTEL目白エンペラー』(東京キララ社、2024年)
知られざる日本遺産~日本統治時代のサハリン廃墟巡礼~(八画出版)から1100円で絶賛発売中。

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