2013年10月03日(木)  

報道関係各位
現行の柔道整復師療養費受領委任払制度の見直し・改革を目指す“患者と柔整師の会” 「登録柔道整復師制度及び柔整療養審査・支払機構」について保険者向け説明会開催
6月発表の「制度運用改善方策案」に加えて、「類似負傷用施術内容情報提供書」など3案を提案 11月施術分から本制度のルールで類似負傷用施術内容情報提供書を添付したJB接骨院のレセプトを保険者に提出、検証開始

■保険者10組合12名、マスコミ・関係者含む合計32名出席■
“患者と柔整師の会”(患者代表:今城康夫、柔整師代表:荻原啓二)は、8月30日(金)  午後、東京・中野区の柔道整復師センターにおいて、保険者を対象に「登録柔道整復師制度及び柔整療養審査・支払機構」に関する詳細な説明会を開催しました。保険者10組合12名、マスコミ・関係者を含む合計32名が参加しました。

“患者と柔整師の会”は今年6月、中野サンプラザで発表した「柔道整復師施術料療養費請求・受領委任払制度運用改善方策案」に加えて、①類似負傷用施術内容情報提供書案(類似負傷を請求するに当たり、患者の負傷状況を保険者に十分な情報提供するための資料)②類似負傷施術録案③治療計画案の3案を追加発表、保険者に説明しました。これらの資料を基に第二部本論で、社団JB日本接骨師会最高顧問、本多清二氏(弁護士)が保険者と質疑応答、議論しました。

また、事務局は平成22年2月から3年6カ月にわたって続けている、事務局員による全国保険者訪問件数が2,236件、全体の44.4%に達し、保険者種別で見ると、健康保険組合1,294件、90.9%と高い訪問比率(平成25年4月現在)であることを発表しました。さらに保険者訪問をしている事務局員3人が制度運用改善方策案などに対する全国の保険者の生の声を報告しました。

本多顧問は、本制度は今や「実行」の第一段階に入った。本制度のルールに基づき、11月施術分から約1年間、接骨医療臨床研究所付属のJB接骨院のレセプトを、「類似負傷用施術内容情報提供書」を添付した上で、実際に保険者に提出・検証することを表明、保険者に協力を求めました。併せて1年の検証後、2~3年かけて全国の接骨院、整骨院に対して広めていく方針を明らかにしました。

この日、冒頭、今城康夫・“患者と柔整師の会”代表が開催趣旨について下記の通り挨拶しました。
「私たちは国民生活に密着した現在の柔整療養費受領委任払制度の改革をするため、全国各地で保険者会議、柔整師会議、患者会議を開催し、広く皆様から提案をいただき、昨年8月に柔整療養費受領委任払制度の第三次改革案を作成、提案を行いました。本年6月、中野サンプラザで、現実的な方策案として改革試案の一つである登録柔道整復師制度について発表、実施の提案を行いました。
本日は、登録柔道整復師制度及び柔整療養審査・支払機構制度を一層ご理解いただいた上で実施いたしたく、保険者様向け説明会を開催した次第です」

伊藤和美、金城弘恵事務局員及び河村政孝地域連絡員は全国の保険者訪問、
2236件を通じて得られた現行制度に対する保険者の反応を報告しました。

報告①「最近、健康保険組合(以下、健保組合)独自に審査基準をつくっている保険者がある。関西のA健保は、独自に規定を決めて、コンプライアンス(法令順守)として組合大会で柔整師にかかるためのルールを定め、地元厚生局に届け出たという。この方法を参考に取り入れたいという健保組合が幾つかあり、関西、中部の保険者がA健保に出向き、手法を勉強したいという話だった」

報告②『ある保険者に「類似負傷用施術内容情報提供書」をみせて説明したところ、細かい内容が表記されているのは保険者としてありがたい。これをレセプトに付けてこない柔整師には、付けて申請するように、と保険者から言いたい。ただ、その場合、柔整師からどうしてこんなものを付ける必要があるのか、といったクレームが来たり、訴訟を起こされたりしては困るが、その辺の対応はいかがですか、という質問があった』

報告③「支払基準があいまいなため判断に困る。不審なものでも支払っている」

報告④「柔整療養費は医科医療費と比べると少額であり、人的要因、煩雑さ、対費用効果を考えると、外部委託のほうが得だ。審査料はかかるが、患者照会はしてくれるし、煩わしさがない。その上、地元厚生局の検査でよい評価が得られる」

報告⑤「保険者から期待、要望されていることは3点に尽きると感じた。1受領委任払制度への疑問払拭、2医科・歯科・薬科の支払基金のような柔整版支払機構の創設、3業界団体に入っていない個人請求者急増への対応と質の向上」

報告⑥「大手健保組合の常務理事が、医療費、療養費の増加を抑えて、保険事業費を捻出するため、ジェネリック医薬品をもっと使い、薬科代金を引き下げてもらうため、調剤薬局へ使用促進のお願いに行くと話していた。このままでは赤字が増え大変であると、どこの健保組合も同じ意見だった」
報告⑦『現在、申請書の「委任します」という文言のもと、患者は療養費の請求を柔整師に委ね、同意してサインするが、類似負傷の情報提供書や施術録にはその断りがないために、個人情報の取り扱いとしては、その文言を載せたほうがよいのではないかとの意見があった』

この後、第二部本論に入り本多顧問から、下記の報告・説明があり、さらに保険者とのあいだで熱心な質疑応答が行われました。

①未登録柔整師の療養費請求を認めないとした場合の法的な問題
②療養費請求のデータ電子化
③「急性期・亜急性期、その他の負傷症状の区分の仕方
(1)急性期・亜急性期の骨折(不全骨折を含む)・脱臼・捻挫・打撲及び挫傷の5負傷(急性期外傷・亜急性期外傷)
(2)上記5負傷と類似した程度の痛み、機能(運動)制限の症状が見られる負傷(類似負傷)
(3)医師から具体的に指示・要請があった負傷(医師依頼負傷)
(4)保険者が一般的ないし、具体的に療養費の支払対象とした負傷(保険者指定負傷)
④類似負傷に関する施術録、施術計画書及び情報提供書の作成のあり方
本多氏はまず、
①療養費受領委任払いはどんな制度なのかが一番よく表れている最近の事件
②現在、柔整師業界で採られている療養費受領委任払い制度の「歴史的背景」について下記の通り報告しました。
   
①療養費受領委任払いはどんな制度なのかが一番よく表れている事件
被保険者Aへの誤払いを被保険者Bへの請求で「相殺」した保険者の場合
「保険者も整復師も受領委任払い制度を十分理解しない」が原因

本多氏は
「被保険者A、Bがいる。甲という柔道整復師が被保険者から請求代行と受領代行で委任を受けて、保険者にお金を請求した。保険者は支払ったが、後で誤払いに気がついた。不正請求だった。返してくれと頼んだ」
「保険者は知恵を絞った。次にこの柔道整復師は、被保険者Bの保険療養費の受領委任払いを受けて請求をした。この請求を誤払いの請求で相殺してしまった。支払いを拒否した。相殺したという。こういうテクニックを取れますかという問題です」と、「相殺」による誤払い分処理事件の顛末、そしてこれは保険者、柔整師双方の受領委任払い制度への理解不足が原因と、説明しました。

本多氏はこの事件についてさらに次のように解説しました。
「保険者自身が自滅行為をした。保険者は療養費受領委任払いをわかっていないから、こういうことをする。整復師が請求しているのは、整復師が固有の権利で請求しているのではない。誰かの請求の委任を受けている。Aという被保険者の委任を受けて、請求して、Aに払うものを受け取った。それをBの被保険者の請求と相殺できるわけがない。それを保険者がやってしまった」

②療養費受領委任払い制度の歴史的背景
昭和11年、現行制度開始 昭和36年、国民皆保険制度発足時、見直しチャンス逃す

本多氏は
「昭和11年、現在の療養費受領委任払い制度が始まった。これは例外措置として取り入れられたのだが、現在までわずかの改正があった程度で77年間、延々と続いている。この制度に柔整師、保険者、患者が長い間、悩まされてきた」と、長期にわたり本格的な見直し・改正がなかった同制度の歴史的背景を説明しました。

本多氏によると「これまで見直しのチャンスはあったが、それを逃してしまった」として、『昭和36年、国民皆保険制度が発足、「誰でも」「いつでも」「どこでも」国民が平等に医療を受けられるようになった時、この変則的な療養費受領委任払いをどのようにするか、議論をきちんとすべきだったのに、全くネグレクト(無視)され、問題を抱えたま存続しました』と説明しました。

その後、最高裁の判決の結果、柔整師養成機関がどんどん増え、柔整師数の増加、一部柔整師による療養費不正請求・疑惑請求などの問題が吹きだし、柔整師業界を見る社会の目が大変厳しくなったとして、改革・見直しに着手した経緯を話しました。

『この試案をつくり始めたときに「療養費受領委任払制度というものは必要か。なくてもいいのでないか」を考えました。しかし、「仮にない場合、どうなるのかということを考えれば、必要か、必要でないかわかります」とも話しました。

『仮に「ない」場合、「私は柔道整復師の治療を受けると、現金を払い、領収書をもらって、保険者に「償還払い」を請求する。個別・具体的に判断していくことになると、保険者の仕事量は大変なことになる。そういう意味では、今の制度は手続負担的には、いいのでは、という感じがする」と、現行の柔道整復師療養費受領委任払制度の見直し・改革を実施の上で継続する方針を明らかにしました。

本多氏はこの後、保険者と質疑応答、議論を行いました。

保険者①保険者は「柔整療養審査・支払機構」と契約・登録するのが前提か
健保組合は、まずこの「柔整療養審査・支払機構」と契約、登録をして、機構との契約の中で支払いをしたり審査をしてもらったりするのが前提なのか。

本多氏①機構は保険者と契約することはない。ただし、少なくとも「申し合わせ事項」はつくりたい。なぜ契約しないかというと、本当は契約したいが、保険者は組織が大きいところ、小さいところがあって、大きいところは稟議をとったりして、(処理がスムーズに進まず)なかなか内部で統制できない(ケースが予想される)。双方で申し合わせをして、こういうルールで我々は療養費を請求しますから、ひとつその辺はお含みの上で、しかるべく運用してくださいーというお願いです。

保険者②社団JB日本接骨師会以外の柔整師も同じ取り組みをして欲しい
社団JB日本接骨師会(以下、JB会)だけがこういうシステムをつくっても、例えば各県に柔道整復師会があるが、一緒に取り組んでほしい。

本多氏②本当のことを言うと、「だから全員登録してください。当方に登録して、きちっとした厳しいレセプトを出して、厳しい書類をつくった人だけに安心して支払ってください」と言いたい。それが一番理想です。ところが現実は、なかなかそうはいかない。私達に登録していない整復師からレセプトが来ましたら「JB会のレセプトはこういう添付資料が来ました。JB会が出したようなのを出してください。ひな形を差し上げるから、まねして出してください」と伝えてください。私達はノウハウを提供します。

保険者③不正請求が判明したが、上司から「返還請求」でなく「不払い」にしろと指示されたケースについて

不正請求について患者照会をし、明らかに違う場合が時々あり、上司からは、その場合は返還請求ではなくて、「不払い」にしなさいと言われている。逆に言えば、患者は、あそこは払ってくれないから行きにくくなると感じる。患者から見れば、せっかく通って状態がよくなってきたのに、整形外科へ行っても治らないから柔整に通っているのに、治ってきたと思ったら、不正請求を疑われ行きづらくなるのは困る。

本多氏③私達がつくる制度は、自由に5部位でも10部位でも施術していい。しかし、療養費として請求できるのは2部位ですよ。その代わりある程度の期間はやってもいいですよ、というようにして、かかりやすくしていけばいい。多分、保険者の患者照会の半分は減ります。それでも不正な人間はいます。その場合に誰が照会するかといったら、私達、機構が対応します。保険者がやる必要はありません。不正がある場合には、私達が司法当局に摘発します。

この他、保険者からは「他の団体との連携」「審査を他の組織に任せている団体への対応」「ひとりの患者に対して何年も施術している柔整師」「振り込み明細を出せといわれた」など多くの質問があり本多氏はていねいに対応しました。

最後に本多氏は
「柔道整復師の療養費は、国が管理しているようで管理していない。規律があるようでない。どこが責任を負うかといえば、責任を負うところがはっきりしていない」

「柔整師養成学校の乱立、悪徳柔整師の跋扈など、悪の循環という言葉がそのまま当てはまるような絵になりつつある現状の中で、きちんと仕事をしている柔整師が死に絶えないうちに、きっちりとした制度をつくり上げ、業界を正常化していきたい」と意気込みを語り、保険者向け説明会を「総括」しました。
        
【患者と柔整師の会のプロフィール】
超高齢化時代の到来を目前に控え、多くの患者は柔道整復診療で痛み、機能障害などから解放されたい、と切に希望しています。複数の重大問題が包含される現行の柔道整復師療養費受領委任払制度を抜本的に見直すことを目的に、2010年2月  、全国の柔道整復師と患者の有志が中心となり設立されました。現在、会員数は約7,200人に達しました。以来3年間、保険者、柔道整復師、患者の意見を数多く聴取して、改革案を3回にわたり作成、関係者に説明の努力を重ねました。今回、6月6日  総括会議を開催、これまでの議論、審議を通じて作成した完成改革案を発表しました。
・設立 2010年2月  
・事務局 〒108-0074 東京都港区高輪2-16-49 カムロ高輪ビル2F 
・TEL&FAX     ・URL http://pb-jb.org/
・E-mail   ・会員数 約7,200人
・問い合わせ:社団JB日本接骨師会 担当:金城
       〒164-0013 東京都中野区弥生町1-13-7
       TEL: FAX:
・代表 患者代表 今城康夫 柔整師代表 荻原啓二




(プレスリリースの本文)


■本件に関するお問い合わせ先
内容、取材に関するお問い合わせは下記までお願いします。
社団JB日本接骨師会 担当:金城
TEL 03(5388)7211
FAX 03(5388)7231
E-mail




 

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“患者と柔整師の会”

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