2023年11月27日  
【調査レポート】多様な学びのひとつ「ホームスクール」唯一の全国調査で
良好な親子関係や経済的負担が明らかに。収入減保護者も4割
~2023年度ホームスクール&ホームエデュケーション家庭 全国アンケート~

家庭を拠点とした多様な学びの情報交換、交流をおこなっている当事者団体「ホームスクール&ホームエデュケーション家族会」は、2023年8月  に、全国のホームスクール/ホームエデュケーション家庭90世帯(子ども118名分)を対象に、アンケート調査を行いました。その調査結果をお知らせいたします。
調査の背景
「ホームスクール/ホームエデュケーション」は個々の子どもに個別最適な学びを提供する、多様な学びの選択肢のひとつです。小中学校の不登校児童生徒が30万人に迫る中、不登校後のポジティブな選択肢のひとつとしても広がりを見せています。日本国内で唯一のホームスクールやホームエデュケーションに特化したアンケート調査である「ホームスクール&ホームエデュケーション家庭 全国アンケート」は、今年度で3回目の調査となります。家庭を拠点とした学びに関わるメリットやデメリット、魅力や悩みなどを明確にする目的で行われ、今年は特に、家庭における親子関係の良さや経済的な負担、行政の施策とのズレが目立ちました。

家庭を拠点とした学びの効果、親子関係は「良い」が95.6%、「悪い」は0%

「とても良い」「おおむね良い」が95.6%という結果の中には、一般的に親子関係を含む人間関係が難しくなりがちな中高生以降の年代の子どもが35.5%含まれていることに注目していただきたいです。

続く問4-2では、そう感じる理由を自由記述してもらいましたが、
・一日中一緒にいても疲れない
・親子で会話があり、雑談、要望、不満など様々な会話ができる
・コミュニケーションが円滑
・家族同士が話す時に表情が柔らかく笑顔が多い
などがあり、親子間の信頼関係がしっかり構築できていると考えることができます。

学びの素地は安心できる関係性を土台に育まれます。その点で、ホームスクール/ホームエデュケーション家庭の親子関係、学び合う関係の構築は成功していると言えます。

併せて
問9:ホームスクール/ホームエデュケーションの「良さ・魅力・やりがい」について教えてください(自由記述)
問16:子どもに対して在籍している学校に復帰してほしいという気持ちはありますか?
も、ご覧ください。

ホームスクール&ホームエデュケーション家庭の経済的負担感は大きい
■「困りごと」トップに経済的負担

■「収入が減った」「働きたいが働けない」保護者が60%

■経費は平均月額20,000〜25,000円

岡田 佳子氏(長崎大学教育開発推進機構生涯学習センター准教授)コメント抜粋
「保護者はホームスクールにおおむね満足している一方で、経済面で強い負担を抱えていることが示されたのも、今後より広く社会的に知ってもらう必要があるでしょう。〜中略〜彼らは大きな経済的負担を感じています。今回調査した家庭のうちホームスクールを選択することで働き方を変えたり仕事を辞めたりした保護者は全体の50.0%となり、そのうち収入が減った層は80.8%に上ります。ホームスクールにかかる費用も平均23599円という結果が出ています。このように、保護者は多大な経済的負担を背負いながらもホームスクールを選択していることがわかります。」

日野 公三氏(書籍「発達障害の子どもたちの進路と多様な可能性」著者)コメント抜粋
「従来、世界中のホームスクーラーたちの不安の上位は、「社会性(社交)不安」「学力不安」「(ホームスクールのその先の)進路不安」という3つです。ところが今回の結果では、2番目に「将来の経済的自立不安」が来ています。深読みをすると、保護者自身、収入が減ったと実感する人が増えているため、わが子に対してもその経済的な側面への心配が頭をもたげてきたのではないかと思えます。」

併せて
問8:ホームスクール/ホームエデュケーションに関する保護者の「社会に求める要望」は何ですか?
問23:子どものホームスクール/ホームエデュケーションにかかる『月額の交通費』を「千円単位」で回答してください
もご覧ください。

国や自治体の施策とのズレ?進まぬ教育支援センター(適応指導教室)の活用
■教育支援センターを「現在活用中」は4.2%にとどまる

■教育支援センターを活用しない理由

おおたとしまさ氏(教育ジャーナリスト)コメント抜粋
「これからは教育支援センターが、学校以外で行われる義務教育のコンシェルジュ的な役割を果たさなければいけないと思います。学校以外の学びの場や居場所や出会いの場を提案できたり、家庭での学習計画をいっしょに考えてくれたりする役割を期待したい。しかし今回のアンケート結果のうち最も衝撃的な数字の1つは、問22で、教育支援センターの利用率がたったの4.2%だったことです。いま文科省の不登校対策COCOLOプランが始動していますが、そのなかでも教育支援センターの機能強化が主な取り組みの1つとして挙げられています。地域における学びの多様化を実現する組織としての機能強化を期待したいです。」

日野 公三氏(書籍「発達障害の子どもたちの進路と多様な可能性」著者)コメント抜粋
「教育支援センター(適応指導教室)は公共団体が鳴り物入りで(と筆者は考える)予算を拡充して取り組んでいるものですが、相対的に存在感が低下しています。適応指導なる、語感が不評な概念をいまだ引きずり、親方日の丸的な運営体質が依然として敬遠されていることを行政関係者は肝に銘ずるべきだと考えます。」

併せて
問21:家庭外での学び・つながり
問22-3:「教育支援センター(適応指導教室)」 に1回以上行ったことがある方へ。 上記の回答をした理由をお書きください(自由記述)
もご覧ください。

■まとめ
家庭を拠点に個々の子どもに個別最適な学びを提供する、ホームスクール/ホームエデュケーション家庭の実際の生活、やりがいや悩み、願う支援、行政の施策とのズレなどが可視化されたアンケート調査となりました。

9割を超える家庭の親子関係が良好で、やりがいや魅力を感じて実践する家庭が多い一方、4割に近い保護者が経済的負担を感じている実態と、実際の費用も明らかになりました。ホームスクール/ホームエデュケーションの実践のために働き方を変えたり仕事を辞めたりした保護者、また、働きたいけれど働けない保護者も多いことがわかり、7割を超える保護者が経済的支援を望んでいます。

ホームスクール&ホームエデュケーション家族会は、これらの願いに応えるべく、「ホームスクール/ホームエデュケーションの社会的認知向上」と「将来的な経済的支援獲得」を目指して活動してまいります。

ホームスクール/ホームエデュケーションは多様な学びの選択肢のひとつとして広がりを見せる一方、現在全国で30万人に迫る不登校小中学生がいる中で、不登校後のポジティブな選択肢としても今後重要度、注目度を増していくとみられます。家族会の活動のさらなる展開にご期待、ご支援、ご指導いただければ幸いです。
調査の詳細
『2023年度ホームスクール&ホームエデュケーション家庭 全国アンケート』

【調査期間】2023年8月1日(火)  ~8月31日(木)  
【調査方法】Googleフォーム利用によるインターネット調査
【対象者】
〇日本国内で、ホームスクール/ホームエデュケーションを実践している保護者の方(お子さんの年齢が3歳以上20歳未満のご家庭)〇アンケート回答結果を、インターネット上や各機関等へ向けて公開することに同意くださる方
【本アンケートにおけるホームスクール/ホームエデュケーションの定義】「ホームスクール/ホームエデュケーションとは、年間30日以上学校に登校せずに、家庭に拠点を置いて学習を行う多様な学び(オルタナティブ教育)の一様式である」
【回収サンプル数】90世帯(子ども118名分)

調査データはこちら: https://hshe2023.hp.peraichi.com

主催団体「ホームスクール&ホームエデュケーション家族会」について
「ホームスクール&ホームエデュケーション家族会」(以下、家族会)は、2021年1月  に設立されました。日本国内のホームスクール/ホームエデュケーション(家庭を拠点とした教育や学び)の実践者同士が繋がり合い、情報の収集・提供、認知度向上等を目的とした活動を行う当事者団体です。ホームスクール・ホームエデュケーション家庭への経済支援等を求める政策提言に向けて、2021年より全国アンケートを実施しています。

【主催】 ホームスクール&ホームエデュケーション家族会アンケート運営チー厶
【公式サイト】 https://peraichi.com/landing_pages/view/hshe

■本件に関するお問合せ先
ホームスクール&ホームエデュケーション家族会
お問い合わせ担当:麓・熊谷 
お問合せフォーム:https://ssl.form-mailer.jp/fms/3f34a5e0687607

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👤 発行者について

ホームスクール&ホームエデュケーション家族会

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