2023年1月31日  

大学の研究所が本気でつくった“落ちゲー”

新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的大流行が発生して約3年。国内ではワクチン接種が進み、規制は緩和されてきていますが、変異株が新たに出現するなど予断を許さない状況です。そうした中、国立大学法人大阪大学の微生物病研究所が開発したのが、ブラウザで気軽に遊べるゲーム「病原体をよけろ!」です。

微生物病研究所は、コロナ禍が始まった当初から原因となるウイルスがどのように病気をおこすのか、ワクチンや治療薬などの開発につながる研究を推進してきました。ウイルスが起こす病気に対するワクチンや薬を実用化するためには、そのウイルス自体の特徴や、私たちのからだがどのように反応するのかわかっていなければ開発できません。微生物病研究所ではウイルスやわたしたちの免疫系を明らかにするための研究を展開する国内屈指の研究機関です。
こうした高い研究力を誇る大阪大学の微生物病研究所が開発した「病原体をよけろ!」は、難しそうな研究とうってかわって、画面上部から落ちてくる病原体(ウイルスや細菌)をかわし、アイテムをゲットして得点を競うシンプルなゲーム。いわゆる“落ちゲー”です。レベルは「かんたん」「むずかしい」から選ぶことができ、操作はシンプルかつ、アプリのダウンロードが不要で、誰でもスマホやパソコン上ですぐに楽しめるのが特徴です。
また、ウイルスの研究所が開発しただけに、登場する病原体は同じウイルスなのに何故か人に害があるものとないものに分かれているなど、ルールもマニアックな知識に基づいています。詳細な解説やリンクもあり、楽しみながら病原体などの専門知識も身につく仕様になっています。


コロナ禍3年目の今、なぜゲーム?背景に研究者ならではの思い

ウイルス研究をリードしてきた大阪大学の研究所がなぜゲーム、しかも超シンプルな「落ちゲー」をつくったのか?その背景には、この3年間、新型ウイルスに向き合ってきた研究所ならではの思いが…。それは、今回のコロナ禍がある程度収まったとき、ウイルスや細菌についての人々の関心が薄れてしまうことへの懸念でした。
中心となってゲームの開発を行った、研究所広報担当の中込咲綾は、「研究所として、コロナ禍というこの地球規模での危機的状況を(感染被害としての)傷として残すのではなく、むしろ『きっかけ』として、感染症に対する興味関心、ひいては学術研究に対する興味関心の高まりをさらなる発展につなげたいと考えました」と語ります。
そもそもウイルスや病原体は有史以来、人間をはじめとした生物とともに共存し続けてきました。「ウイルスや細菌などの微生物がすべて怖い、やたら殺菌・滅菌・消毒するのではなくて、微生物も同じ地球に住む構成員で、私達とずっと一緒に生活してきたのです」(中込)。
それだけにこの世界的なウイルス禍を契機に特に次代の研究を担う若い世代に、生命や病原菌に関心を持ってもらうことを考慮し、身近なスマホで手軽に楽しめる、ゲームづくりのアイデアを思いついたとのこと。今回、“落ちゲー”にした理由について、中込は「病原体にあたると減点だけでなく、免疫の発想も加え、病原体が病気を起こすメカニズムがなんとなくわかってもらえれば」と話します。


「焼肉」や「推し」とは?「キャラクター解説」は要チェック!

「病原体をよけろ!」は、“落ちゲー”としての面白さはもちろん、ゲームに登場するウイルスや病原体、免疫効果を発揮するアイテムなどの「キャラクター解説」にも注目です。
一見同じ「ウイルス」なのに、当たってしまうと減点されるウイルスと得点となるウイルス、病原体を持っている「蚊」、持っていない「蚊」などのキャラクターのほか、「焼肉」「推し」など、得点が増えるユニークなアイテムも。なぜ「焼肉」「推し」なのか?こだわりの「キャラクター解説」は注目です。
中込はキャラクター解説にこだわった理由について、「ウイルスや細菌は、人に影響するものもしないものもどちらも、微生物も同じ地球に住む構成員。すべての微生物が怖いと感じて、やたら殺菌・滅菌・消毒するのではなくて、(ゲームを通じて)ウイルスや細菌がどのように病気をおこすのか、感染や病気の発症のメカニズムを正しく知っていただくきっかけになれば」と話します。


特記事項:
このゲームはムーンショット型研究開発事業「ウイルス-人体相互作用ネットワークの理解と制御」と大阪大学感染症総合教育研究拠点(CiDER)の支援により制作されました。


【お問い合わせ先】

大阪大学微生物病研究所企画広報推進室
TEL:  FAX:

http://www.biken.osaka-u.ac.jp/


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👤 発行者について

国立大学法人大阪大学微生物病研究所

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