<発表のポイント>
・光合成の光エネルギー変換反応は、葉緑体内のチラコイド膜という特殊な膜構造の上で行われます。
・本研究は、チラコイド膜の形成・修復を担う VIPP1 が、熱ショックタンパク質HSP70ファミリーに属する cpHsc70-1 と相互作用することを明らかにしました。
・この相互作用は、高温などのストレス下でチラコイド膜を動的に再編成し、光合成を維持するために必須であり、植物の環境適応性を高める新たな分子基盤を示しています。


◆概 要
 植物の光合成は、葉緑体内に存在する「チラコイド膜」と呼ばれる膜構造の上で行われています。チラコイド膜には光合成に必要なタンパク質複合体が集中的に配置されており、その構造が光合成効率を左右します。

 しかし、異なる日照や温度などの環境ストレス下では、光合成のタンパク質だけでなく、このチラコイド膜自体も損傷を受けたり、再構成されたりする必要があります。植物がストレスに耐えるためには、損傷したタンパク質を保護する仕組みと、膜構造を修復する仕組みの両方が必要です。

 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の高等先鋭研究院を構成する資源植物科学研究所の坂本亘教授らは、チラコイド膜の形成・修復などの恒常性を担う膜リモデリングタンパク質VIPP1が、熱ショックタンパク質HSP70ファミリーに属するcpHsc70-1と相互作用することを明らかにしました。cpHsc70-1は「シャペロン」と呼ばれるタンパク質機能の制御によりVIPP1集合体の解体と再編成を制御し、チラコイド膜を動的に維持しています。

 この連携機構により、高温ストレス下でもチラコイド膜の構造が保たれ、光合成機能が維持されることが示されました。本研究は、植物が環境変動に適応するための光合成制御の新たな分子基盤を示すものです。

 この研究成果は、2026年1月  にアメリカの国際学術誌『PNAS Nexus』に発表されました。

 本情報は、2026年1月29日  に岡山大学から公開されました。


◆坂本亘教授からのコメント
 光合成を支えるチラコイド膜は、環境条件に応じて常に作り替えられています。本研究は、葉緑体の熱ショックタンパク質が単にタンパク質を守るだけでなく、光合成の足場となる膜構造の維持にも関与していることを示しました。タンパク質と膜という異なる階層の制御が結びつくことで、植物が高温ストレスに適応していることが分かり、生命システムの巧妙さを改めて実感しています。


◆論文情報
 題 名:Chloroplast heat shock protein cpHsc70-1 interacts with thylakoid membrane remodeling protein VIPP1 C-terminal tail and controls VIPP1 oligomer assembly
 掲載誌:PNAS Nexus 第5巻1号(2026年1月  発行)
 DOI: 10.1093/pnasnexus/pgaf393
 参考論文 Wataru Sakamoto, Thylakostasis: key factors in thylakoid membrane organization with emphasis on biogenesis and remodeling proteins in vascular plants. Plant and Cell Physiology, 66 (11): 1602-1618, DOI: 10.1093/pcp/pcaf098


◆研究資金
 本研究は、文部科学省科学研究費・学術変革領域研究(A)「光合成ユビキティ」計画研究および基盤研究(C)の支援を受けて実施されました。また、本研究の一部は、岡山大学RECTORプログラム(生命科学RECTOR国際光合成拠点)に基づき、ドイツ・ミュンスター大学との国際共同研究として実施された成果です。


◆詳しい研究内容について
 植物がストレス条件でも光合成を維持する新たな仕組みを解明-熱ショックタンパク質HSP70と膜リモデリング分子VIPP1が連携-
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20260129-1.pdf


◆参 考
・岡山大学資源植物科学研究所(IPSR)
 https://www.rib.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学資源植物科学研究所 光環境適応研究グループ
 https://www.rib.okayama-u.ac.jp/saka/
・【岡山大学】岡山大学資源植物科学研究所を「岡山大学高等先鋭研究院」に認定 ~我が国初で岡山大学独自の"世界と伍す研究・イノベーションの卓越と厚みを育成するシステム"を始動~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001796.000072793.html


◆参考情報
・【岡山大学】光合成の主役はヒーローだった?「光合戦隊ヒカレンジャー」が表紙を飾る国際特集号を発行
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003748.000072793.html
・【岡山大学】光合成の足場「チラコイド膜」の再構築に新知見〜原始シアノバクテリアが持つチラコイド膜を作れる能力を証明〜
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003361.000072793.html
・【岡山大学】光合成反応における光損傷と修復のメカニズム解明 ~傷ついたタンパク質を見つけて分解するしくみを明らかに~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001838.000072793.html
・【岡山大学】穀物の「芒(ぼう)」ができなくなるしくみの解明
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000694.000072793.html
・【岡山大学】生命の源、光合成の足場づくり ~「足場=チラコイド膜」を守り光合成を高めるしくみを明らかに~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000144.000072793.html
・【岡山大学】作物でまれに起こる有機リン系殺虫剤の薬害に関する遺伝子の発見 〜バイオマス作物ソルガム(たかきび)を用いた研究から〜
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000291.000072793.html
・【岡山大学】資源植物科学研究所の坂本亘教授が米国植物生物学会ASPBの在外終身名誉会員賞を受賞
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001700.000072793.html
・【岡山大学】生命の源、光合成の足場を保つしくみの解明~「足場=チラコイド膜」を守り植物を高温に強くする~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000003049.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 先鋭研究領域(岡山大学資源植物科学研究所)光環境適応研究グループ 教授 坂本 亘
 〒710-0046 岡山県倉敷市中央2-20-1
 TEL:
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1489.html

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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html