<発表のポイント>
・がん腫瘍の治療には、細胞を死滅させる技術が利用されています。
・光に反応して細胞をアルカリ化させるタンパク質(光駆動プロトンポンプ)を用いることで、マウス体内のがん細胞を光で選択的に死滅させ、がん腫瘍を寛解させることに成功しました。
・ヒトの体内に存在するがん細胞のみを選択的に除去できる副作用の少ない新しい光がん治療法の確立につながることが期待されます。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)の学術研究院医歯薬学域(薬)の須藤雄気教授、小島慧一講師、大学院医歯薬学総合研究科博士課程4年(薬学系)の中尾新大学院生、学術研究院医歯薬学域(医)の冨樫庸介教授、大内淑代教授、佐藤恵太助教、岡山大学病院(脳神経外科)の劒持直也医員の共同研究グループは、光に反応して細胞内をアルカリ化させるタンパク質を利用し、マウス体内に存在するがん腫瘍を選択的に光で死滅させることに成功しました。

 これまで、がん細胞を死滅させる治療法としては主に薬剤が用いられてきました。しかし多くの薬剤は、がん細胞だけでなく周囲の正常な細胞にも作用してしまい、副作用が避けられないという課題があります。

 今回開発された「光がん治療法」は、特定の細胞にだけ作用することが可能であり、将来的にはヒトのがんに応用することで、がん細胞のみを選択的に除去できる、副作用の少ない新しい光がん治療法の実現が期待されます。

 本研究成果は、アメリカ化学会誌「Journal of the American Chemical Society」電子版(現地時間(米国東部標準時):2025年11月4日  9:00、日本時間:同日22:00)に掲載されました。


◆中尾新大学院生からのひとこと
 マウス体内のがん細胞を光で死滅させることに成功しました。副作用の少ないがん治療法として、この技術が、将来のがん医療の一助となることを期待しています。


◆論文情報
 論 文 名:Optogenetic cancer therapy using the light-driven outward proton pump rhodopsin Archaerhodopsin-3 (AR3)
 掲 載 誌:Journal of the American Chemical Society
 著  者:Shin Nakao, Keiichi Kojima, Keita Sato, Naoya Kemmotsu, Hideyo Ohuchi, Yosuke Togashi, Yuki Sudo
 D O I:10.1021/jacs.5c13053
 U R L:https://doi.org/10.1021/jacs.5c13053


◆研究資金
 本研究は、文部科学省科学研究費補助金(基盤研究B: 23K27142, 萌芽研究: 25K22451)、武田科学振興財団薬学系研究助成、G-7奨学財団研究開発助成事業などの支援を受けて実施しました。


◆詳しい研究内容について
 光駆動プロトンポンプで体内のがん腫瘍を消去することに成功~がん治療に光を!~
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20251104-1.pdf


◆参 考
・岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)生物物理化学研究室
 https://sites.google.com/view/laboratory-biophyschem
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 https://www.mdps.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学薬学部
 https://www.pharm.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報
・【岡山大学】薬物送達のジレンマを解決:光で壊れるリポソームの開発と応用
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001489.000072793.html
・【岡山大学】光で狙った細胞を死滅させる新技術の開発 ~副作用のない光がん治療法に向けて~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000521.000072793.html
・【岡山大学】神経抑制に役立つタンパク質の巧みな光応答メカニズムを解明
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000421.000072793.html
・超高速の光パターン照明手法を開発 ~次世代光産業、光科学の基盤的手法として期待~〔北海道大学、岡山大学、科学技術振興機構〕
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002125.000072793.html
・最古の光合成生物「シアノバクテリア」の新しい光利用システムを発見-ロドプシンによる環境適応の軌跡が明らかに-〔海洋研究開発機構, 東京大学, 理化学研究所, 岡山大学, 科学技術振興機構〕
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002647.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)教授 須藤雄気
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(薬)講師 小島慧一
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 薬学部1号館 3階
 TEL:(須藤)
 TEL:(小島)
 https://sites.google.com/view/laboratory-biophyschem
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1457.html

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

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https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html