岡山大学とJAMSTEC(海洋研究開発機構)、高知大学、東京大学大学院工学系研究科の共同研究成果プレスリリースです。


<発表のポイント>
・高解像度火星探査データを用いて、中緯度クレーター内の氷の蓄積の時系列と分布傾向を復元しました。
・その結果、アマゾニアン期に複数回の氷蓄積イベントが発生し、南西方向への供給傾向や供給源の変化が明らかとなりました。
・観測データと気候モデル解析により、過去には現在よりも氷の蓄積量が多く、現在は大きく減少していることを明らかにし、火星の氷安定性と気候進化の理解を進展させるとともに、将来の探査での水資源の利用に貢献する成果となりました。


◆概 要
 火星にはかつて大量の氷があり、その分布や量の変化は気候変動を知る重要な手がかりです。しかし、その全体像はこれまでよく分かっていませんでした。

 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区、学長:那須保友)学術研究院先鋭研究領域(惑星物質研究所)のTrishit Ruj准教授らは、NASAの探査機による高解像度画像(HiRISE、CTX)を用いて、中緯度の750以上のクレーターを調査しました。氷によって形成された地形やクレーター年代、さらに気候モデルを組み合わせることで、過去約6億年の氷の蓄積と分布の変化を明らかにしました。

 その結果、氷は常にクレーター南西側にたまりやすいことが判明しました。これは、日射量の低下や影による「コールドトラップ」が原因であることが分かりました。さらに、過去に起きた氷の蓄積は1回ではなく2〜3回あり、それぞれで供給方向や厚さが異なり、火星の自転軸の傾きの変動に伴う気候変化が影響していました。

 約6億4千万年前には氷が厚く広がっていましたが、その後減少し、最後の氷の蓄積(約9800万年前)では限られた分布になりました。これは、火星が湿潤な時代から乾燥寒冷な時代へ移行したことを示しています。

 本成果は、火星の氷と気候の歴史解明だけでなく、将来の探査での水資源利用にもつながる重要な知見です。

 この研究成果は、2025年9月3日  午前1時(日本時間)、米国地質学会の国際誌「Geology」に掲載されました。


◆Trishit Ruj准教授からのひとこと
 この成果は、JAMSTEC、イタリア・ダヌンツィオ大学、高知大学、米国ブラウン大学、JAXA(宇宙航空研究開発機構)、東京大学との国際共同研究によって得られました。NASAの火星探査機による高解像度画像と、岡山大学惑星物質研究所の解析技術を活用することで、火星の氷の歴史や気候変動の詳細が明らかになり、将来の探査機着陸地点の検討にもつながると期待されます。火星の謎を解き明かすワクワクドキドキするような研究を、私たちと一緒に体験してみませんか?


◆論文情報
 論 文 名:Long-term and multi-stage ice accumulation in the martian mid-latitudes during the Amazonian
 掲 載 誌:Geology (Geological Society of America)
 著  者:Trishit Ruj, Hanaya Okuda (奥田 花也), Goro Komatsu (小松 吾郎), Hitoshi Hasegawa (長谷川 精), James W. Head, Tomohiro Usui (臼井 寛裕), Shun Mihira (三平 舜), and Makito
Kobayashi (小林 真輝人)
 D O I:https://doi.org/10.1130/G53418.1
 U R L:https://pubs.geoscienceworld.org/gsa/geology/article/doi/10.1130/G53418.1/660985/Long-term-and-multi-stage-ice-accumulation-in-the


◆研究資金
 本研究は、科学研究費助成事業(JP17H06459、JP23K19081、JP24H01036)、日本学術振興会特別研究員奨励費(JP20J20413)の支援を受けて実施しました。


◆詳しい研究内容について
 火星の気候変動の足跡:中緯度クレーターに記録された氷のタイムカプセル
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r7/press20250903-1.pdf


◆参 考
・岡山大学惑星物質研究所
 https://www.misasa.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報
・【岡山大学】「岡山大学最重点研究分野」を制定~地域と地球の未来を共創し、世界の革新に寄与する研究大学を実現するために~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001601.000072793.html
・【岡山大学】岡山大学の宇宙戦略について(概要)
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001871.000072793.html
・【岡山大学】岡山大学高等先鋭研究院「宇宙戦略事業に向けた検討会」を開催~宇宙のワクワク、ドキドキを科学技術・イノベーションの力で現実に、そして社会変革を!~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001975.000072793.html
・【岡山大学】岡山大学高等先鋭研究院 宇宙戦略事業に向けた「三朝ブレーンストーミング」を開催 ~研究者らが社会変革を起こす力がある自信を持ち、"新結合"を生むために~
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002117.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
<研究内容に関するお問い合わせ>
 岡山大学 学術研究院 先鋭研究領域(岡山大学惑星物質研究所) 准教授 Trishit RUJ
 〒682-0193 鳥取県東伯郡三朝町山田827
 TEL:
 FAX:
 https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id1432.html

 海洋研究開発機構 超先鋭研究開発部門 高知コア研究所 研究員 奥田花也
 TEL:

 高知大学 理工学部 准教授 長谷川 精
 TEL:

 東京大学大学院工学系研究科 特任研究員 小林真輝人
 TEL:

<広報に関するお問い合わせ>
 岡山大学 総務部 広報課
 TEL:
 FAX:

 海洋研究開発機構 企画部門 海洋科学技術戦略部 報道室
 TEL:

 高知大学 広報・校友課 広報係
 TEL:
 FAX:

 東京大学大学院工学系研究科 広報室
 TEL:
 FAX:

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学の研究機器共用(コアファシリティ)などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究機器の共用の体制・整備等の強化促進に関するタスクフォース(略称:チーム共用)
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:
 FAX:
 E-mail:cfp◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://corefacility-potal.fsp.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学のスタートアップ・ベンチャーなどに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究・イノベーション共創機構 スタートアップ・ベンチャー創出本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 E-mail:start-up1◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://venture.okayama-u.ac.jp/

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています。地域中核・特色ある研究大学として共育共創を進める岡山大学にご期待ください

岡山大学 文部科学省「地域中核・特色ある研究大学強化促進事業(J-PEAKS)」に採択~地域と地球の未来を共創し、世界の革新の中核となる研究大学:岡山大学の実現を加速とともに世界に誇れる我が国の研究大学の山脈を築く~
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001935.000072793.html