岡山大学は10学部・1プログラム、8研究科、4研究所、附属病院、附属学校を有する総合大学型の国立大学法人です。
今回、最新の研究成果をわかりやすく紹介する「FOCUS ON」を2022年3月17日  に発行しました。ぜびご覧ください!


<発表のポイント>
・神経内分泌腫瘍に対して、ペプチド受容体放射性核種療法を中四国で初めて開始しました。
・注射された薬剤が腫瘍に取り込まれ、腫瘍の内側からピンポイントで放射線を照射できる新しい治療法です。
・治療法が限られる神経内分泌腫瘍の患者さんに有効な本治療を届けたいという思いで、岡山大学病院では多くの部門が連携し、中国・四国地方で初の治療を開始しています。


◆発表者
 岡山大学病院 消化器内科/総合内科 准教授 堀口 繁
 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)講師 吉尾 浩太郎


◆導 入
 腫瘍は良性腫瘍と悪性腫瘍に分かれます。神経内分泌腫瘍は、悪性腫瘍のひとつです。人口10万人のうち数人程度の発症頻度と稀な疾患で、消化管(食道・胃・十二指腸・小腸・大腸・直腸)や膵臓、気管支、肺などにできることが知られており、最近は健診機会の増加、画像機器の発達や、病気の認識が広がったことにより、次第に診断される頻度がふえてきています。
 比較的ゆっくり悪化することが多く、早期に発見・診断することができれば、手術によって完全に治る可能性が高い病気です。ただし、症状がなかなか出現しないために、診断時に既に転移をきたしている場合には、残念ながら手術で完全に治る可能性は低くなってきます。
 また、初回に手術が行われても、再発した場合には再手術ができない場合が多いのが現状です。以前はそのような患者さんへの有効な治療薬がなく、余命も短い疾患でしたが 2011年を境にしてエベロリムス、スニチニブ、ソマトスタチンアナログ製剤、ストレプトゾシンなどの各種薬剤が次々と有効性が証明されたことで、国内で保険承認されました。
 従来行われていた腫瘍血管を詰めて兵糧攻めにする治療(血管塞栓療法)やラジオ波焼灼療法に加えて、それらの薬剤を用いることで、以前に比べれば余命は改善してきています。ただし、これらの治療が効かなくなった患者さんに対する更なる有効な治療法が求められていました。


◆背 景
 神経内分泌腫瘍細胞には以前からソマトスタチン受容体という特殊な蛋白質が発現していることが知られていました。この受容体(蛋白質)はタイプ1からタイプ5まで知られており、神経内分泌腫瘍では主にタイプ2とタイプ5が多く認められます。
 このソマトスタチン受容体にはソマトスタチンという物質が特別によく結合することが分かっていますので、そのソマトスタチンに腫瘍を攻撃する能力の高い放射線物質(ルテチウム177)を結合させた薬剤が開発されました。
 これを用いた治療法が「ペプチド受容体放射性核種療法(PRRT)」と呼ばれるもので、この度2021年に国内で新規に承認されました。PRRTは、欧米では2010年代から標準治療として位置づけられていましたが、日本では海外から遅れをとっていました。そのため、この治療を望む患者さんは自費で海外にわたり、治療を受けてくる必要があり、本邦での速やかな承認が切望されていました。


◆研究治療内容、業績
 新規治療として切望されたPRRTですが、放射線に関連する規則に従う必要もあり、通常よりも導入が煩雑であることが判明しました。PRRTを早期に導入すべく、2021年7月  には院内でプロジェクトチームが立ち上がり消化器内科、放射線科、放射線部、看護部、薬剤部の部門横断的な協力の下、中四国地方では最も早く治療を開始することができました。12月1日  から治療を開始しており現在までに4人の患者さんの治療を行っております。
 1回の治療を2泊3日で行い、8週間隔をあけて合計4回行う半年がかりのスケジュールとなります。現時点では、トラブルは無く予定通り治療を行っています。このような各科、各部門の綿密な連携を要する治療導入は、この疾患に対する知識のみならず、治療に対する熱意があってこそ成立しえたと考えています。現在は他施設からの問い合わせを多数いただいており、遠くの施設に行かなくとも神経内分泌腫瘍の最先端の治療を岡山大学病院で提供できる体制を整えることができました。


◆展 望
 PRRTがどのような患者さんに有効であるかを事前に知ることができれば、より効果的にこの薬剤を活用することができると考えておりこの点における研究を行っております。また、神経内分泌腫瘍は、画像診断、病理診断、手術、薬物療法、血管塞栓療法、ラジオ波焼灼療法、ゲノム医療、PRRTといった多職種連携を最も必要とする疾患といえます。
 岡山大学病院はこれらの診療体制を十分に整えており、がん情報サービスの希少がん情報公開専門病院への登録を行っております。この体制を生かし、関連医療機関との連携を深めていくことで神経内分泌腫瘍診療において地域医療に更に貢献してまいりたいと思います。


〇FOCUS ON:神経内分泌腫瘍治療への新しい挑戦~新しい放射線治療の導入~
https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20220317-1.pdf


◆参 考
・岡山大学病院
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/
・岡山大学病院 消化器内科
 http://www.okayama-gastro.com/
・岡山大学病院 総合内科・総合診療科
 https://okayama-u-sougounaika.jp/
・岡山大学大学院医歯薬学総合研究科
 https://www.mdps.okayama-u.ac.jp/
・岡山大学医学部医学科
 https://oumed.okayama-u.ac.jp/med/
・岡山大学医学部保健学科・大学院保健学研究科
 https://www.fhs.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報:FOCUS ON
・【岡山大学】全身性エリテマトーデスで免疫力が低下する原因分子を同定
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000419.000072793.html
・【岡山大学】酵母が必要としている栄養素を酵母に語らせる技術を開発
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000516.000072793.html


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学病院 消化器内科/総合内科 准教授 堀口 繁
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス
 http://www.okayama-gastro.com/medical/_staff_detail.php?id=29

 岡山大学 学術研究院 医歯薬学域(医)講師 吉尾 浩太郎
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1 岡山大学鹿田キャンパス
 https://radiology.hsc.okayama-u.ac.jp/about/staff/yoshio-kotaro/

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

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 岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
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 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html

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