<発表のポイント>
・医療ビッグデータやオミクスデータなどを活用したデータサイエンスにより、高脂血症治療剤シンバスタチンが抗がん剤誘発末梢神経障害に有効であることを見いだしました。
・シンバスタチンが抗がん剤誘発末梢神経障害を抑制する分子メカニズムの一部を解明しました。
・本研究アプローチを用いることで、他の薬剤性副作用や、癌をはじめとする難治性疾患に対する創薬につながることが期待されます。


◆概 要
 国立大学法人岡山大学(本部:岡山市北区津島中、学長:槇野博史)の岡山大学病院(本院:岡山市北区鹿田町、病院長:前田嘉信)薬剤部の座間味義人教授、牛尾聡一郎特任助教、同大学院医歯薬学総合研究科医療教育センターの小山敏広准教授、徳島大学大学院医歯薬学研究部 臨床薬理学分野の石澤啓介教授・新村貴博研究員、相澤 風花特任助教、九州大学大学院薬学府 臨床育薬学分野の川尻雄大助教らの研究グループは、データサイエンスを基盤とした新たな創薬アプローチにより、高脂血症治療剤シンバスタチンが抗がん剤誘発末梢神経障害に有効であることを見いだしました。

 抗がん剤であるオキサリプラチンは、副作用としてしびれなどを伴う末梢神経障害を高頻度で発現し、がん患者のQOL低下や治療の中止にもつながるため、治療法の開発が求められていました。しかしながら、オキサリプラチン誘発末梢神経障害は患者数が少なく、治療薬候補の有効性評価が困難であるため、これまでに臨床応用された有効な治療薬はありませんでした。

 本研究では、医療ビッグデータとオミクスデータを用いて、既存承認薬の中からオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対して臨床上の有効性が示唆される治療薬候補を抽出し、有効性と作用機序を明らかにしました。今後、実臨床におけるさらなる有効性の検討するために、多施設共同臨床研究を展開し、臨床応用を目指しています。さらに、本研究で用いた創薬戦略は、様々な疾患に応用可能であり、希少疾患や癌をはじめとする難治性疾患の治療薬開発に貢献することが期待されます。

 本研究成果は、2022年3月1日  に米国の医学誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」に掲載されました。


◆座間味義人教授からのひとこと
 本研究では、がん患者さんのQOLを著しく低下させる副作用であるオキサリプラチン誘発末梢神経障害に対して、安全な治療薬候補を見いだすことができました。
 今後も、医療ビッグデータ解析を中心としたデータサイエンスにより、薬剤性副作用や癌をはじめとする難治性疾患などに対する治療法を見つけていきたいと考えています。


◆論文情報
 論 文 名:Identification of Prophylactic Drugs for Oxaliplatin-Induced Peripheral Neuropathy using Big Data
 掲 載 紙:Biomedicine & Pharmacotherapy
 著  者:Yoshito Zamami, Takahiro Niimura, Takehiro Kawashiri, Mitsuhiro Goda, Yutaro Naito, Keijo Fukushima, Soichiro Ushio, Fuka Aizawa, Hirofumi Hamano, Naoto Okada, Kenta Yagi, Koji Miyata, Kenshi Takechi, Masayuki Chuma, Toshihiro Koyama, Daisuke Kobayashi, Takao Shimazoe, Hiromichi Fujino, Yuki Izawa-Ishizawa, Keisuke Ishizawa
 D O I:10.1016/j.biopha.2022.112744
 U R L:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35240525/


◆詳しいプレスリリースについて
 データサイエンスを基盤としたドラッグリポジショニングにより抗がん剤副作用に対する治療法を開発
 https://www.okayama-u.ac.jp/up_load_files/press_r3/press20220318-2.pdf


◆参 考
・岡山大学病院
 https://www.okayama-u.ac.jp/user/hospital/
・岡山大学病院 薬剤部
 https://pharm.hospital.okayama-u.ac.jp/
・Global×Localな医療課題解決を目指した最先端AI研究開発人材育成プログラム(文部科学省 保健医療分野におけるAI研究開発加速に向けた人材養成産学協働プロジェクト)
 https://clinicalai.hsc.okayama-u.ac.jp/


◆参考情報
・【岡山大学】インク成分は内分泌かく乱作用を有し、がん悪化に寄与?
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000242.000072793.html
・岡山大学Society5.0シンポジウム「越境する人工知能 ~Society5.0テクノロジーの展開と可能性~」を開催
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000036.000072793.html
・岡山大学Society5.0シンポジウム「AI×医療×工学 ~AI医療応用最前線~」〔9月7日(火)  オンライン開催〕
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000222.000072793.html
・医療サービスに直結するAI研究開発と実践人材を育成 ~岡山大学における『Global×Localな医療課題解決を目指した最先端AI研究開発』人材育成教育拠点の取組~
 https://kyodonewsprwire.jp/release/202102231325


◆本件お問い合わせ先
 岡山大学病院 薬剤部 助教 牛尾聡一郎
 〒700-8525 岡山県岡山市北区鹿田町2丁目5番1号 岡山大学鹿田キャンパス
 TEL:
 FAX:
 https://pharm.hospital.okayama-u.ac.jp/

<岡山大学病院との連携等に関する件(製薬・医療機器企業関係者の方)>
 岡山大学病院 新医療研究開発センター
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 下記URLより該当する案件についてお問い合わせください
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/ph_company/

<岡山大学病院との連携等に関する件(医療関係者・研究者の方)>
 岡山大学病院 研究推進課 産学官連携推進担当
 〒700-8558 岡山県岡山市北区鹿田町2-5-1
 TEL:
 E-mail:ouh-csnw◎adm.okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 http://shin-iryo.hospital.okayama-u.ac.jp/medical/

<岡山大学の産学官連携などに関するお問い合わせ先>
 岡山大学研究推進機構 産学官連携本部
 〒700-8530 岡山県岡山市北区津島中1-1-1 岡山大学津島キャンパス 本部棟1階
 TEL:
 E-mail:sangaku◎okayama-u.ac.jp
     ※ ◎を@に置き換えて下さい
 https://www.orsd.okayama-u.ac.jp/

 岡山大学メディア「OTD」(アプリ):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000072793.html
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 岡山大学SDGsホームページ:https://sdgs.okayama-u.ac.jp/
 岡山大学Image Movie (YouTube):

 「岡大TV」(YouTube):https://www.youtube.com/channel/UCi4hPHf_jZ1FXqJfsacUqaw
 産学共創活動「岡山大学オープンイノベーションチャレンジ」2022年3月  期共創活動パートナー募集中:
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000528.000072793.html

 岡山大学『THEインパクトランキング2021』総合ランキング 世界トップ200位以内、国内同列1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000070.000072793.html
 岡山大学『大学ブランド・イメージ調査2021~2022』「SDGsに積極的な大学」中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000373.000072793.html
 岡山大学『企業の人事担当者から見た大学イメージ調査2022年度版』中国・四国1位!!
 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000122.000072793.html

国立大学法人岡山大学は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」を支援しています。また、政府の第1回「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞しています