日本正月協会(本部/群馬県渋川市、代表/今成優太)は、日本各地のお正月の文化を調査・啓発する研究団体です。日本正月協会は、例年おこなっている事業「正月の殿堂」において、2021年の正月県を「奈良県」に決定したことを先月公表していましたが、4月9日の「大仏の日」にちなんで、その詳細や経緯を4月9日に公表しました。正月の殿堂プロジェクトでは、毎年一定の審査基準を設け、各都道府県を実地訪問・審査し、その年のテーマに最もふさわしい都道府県を「正月県」として認定することとしています。2021年の今年は、しめ飾りや門松などの「正月飾り」を基準に西日本21府県を調査した結果、奈良県を正月県に決定することとしました。

【決定の背景】
 奈良県が正月県に選定された決め手となったのは、桜井市の大神神社一帯で飾られている「蓬莱飾り」や「朱御幣」といった特徴的な飾りが目を惹いたからです。全国的に普及しているお正月飾りには、「しめ飾り」や「門松」が知られていますが、大神神社周辺では、その他に「蓬莱飾り」という飾りが飾られていたり、「朱御幣(お正月飾りではありません)」が飾られているのに目を惹かれ、このたび正月県に認定されることになりました。
 大神神社の広報担当の話によると、蓬莱飾りは10年ほど前から、大阪の観光客向けに提供され始めたお正月飾りで、大神神社周辺の地域土着の文化ではないようです。しかし、来訪者に向け伝統的な正月飾りを新たに提供し始める取り組みは、伝統文化継承において尊重されるべきことです。また、全国的に白いものが一般的であると考えられている「御幣」も、同神社の周りでは赤い色(紅赤)で屋外に飾られ、目を惹きます。その歴史は古く、いつから、なぜ始まったのか、文献に記録がないことからその経緯は不明だそうですが、五行説に基づいた魔除けの意味があるそうです。こうした飾りの伝統が連綿と受け継がれていることも目を見張るべきことであり、他県が規範とすべきであると認められることから、今回の決定に至りました。

 お正月は、日本の新年祝いを表す言葉ですが、1,000年以上の歴史を持ち、日本ならではの発展を遂げた、食・行事・遊び・芸術などのパッケージとなった文化です。その魅力は海外に十分に知られておらず、その啓発を目的に当事業は開催されています。正月県に選定された都道府県は、協会を挙げて、年間を通して積極的なプロモーション活動をするとともに、2025年の大阪万博において、国際社会に向けて「日本のお正月の代表」としてPRすることを目標としています。昨年2020年は「正月行事」を基準に「山梨県」が正月県に選ばれましたが、コロナ禍において密を防ぐ目的で、今回は人と人との接触のないよう、屋外の正月飾りを基準として正月県が選定されました。今後も2025年までに複数の都道府県が選定されていくことが予定されています。